2-4 第94回国会 参議院 運輸委員会 第12号 昭和56(1981)年6月2日

参議院で法律が成立する前日の最後の委員会における参考人招致。厚生省水道環境部長の山村勝美氏と、兵庫県副知事の戸谷松司氏が発言している。この委員会で、決議にあたっての「附帯決議」も最後に出された。 ちなみに大阪湾フェニックスセンターの建設にあたっては兵庫県の関与は大きく、理事長は代々兵庫県副知事があたる。
○参考人(寄本勝美君) ただいま御紹介をいただきました早稲田大学の寄本でございます。本日は、本委員会でフェニックス計画及びセンター法案につきまして私なりの考え方をお伝えいたします機会を与えられまして感謝いたしております。  せっかくの機会でございますので、忌憚なく十五分の間に意見を述べさしていただきたいと思います。  まず、最終処分地の問題でございますけれども、私、廃棄物の勉強を始めましてからかれこれ十年少したつわけでございまして、その間ずいぶんと多くの自治体の現場を歩き回った者の一人でございますけれども、廃棄物の問題につきましては、最終処分地の確保というものがいかに重要であるか、そしてそれがだんだんとなくなってきているということに関しまして、早く何らかの対策を打たなければならないというふうに強く感じてきた者の一人でございます。  そういう意味で、今回のこの動きに関しましても大変私なりに関心を寄せてまいったわけでございますが、ただ、いかに処分地が必要であるといいましても、昨今のセンター法案に関しましては幾つかの問題点、重要な問題点が残されているのではないかというふうに感じます。  まず第一番目でございますけれども、環境問題という点からでございます。で、東京湾、大阪湾に広大な埋め立て処分場をつくることになるわけでございますけれども、もとよりこの二つの湾に対しまして環境上重大な影響を及ぼすということになると思われます。したがいまして、その面でのマイナス面をできるだけ防止するためには、何にも増してきめの細かい環境アセスメントをやらなければならないと思います。  ところで、環境アセスメントでございますけれども、場合によってはかなり大幅な修正があり得るかもしれず、さらには、これもまた場合によってはでございますけれども、東京湾、大阪湾にはもはや大きな処分場をつくることは好ましくないというような指摘が環境から出てくることも全くないとは言えないのではないかというふうに思います。そういう点から考えますと、とにかくまず環境の調査というものを徹底的に行い、そしてその枠の中でどのような処分場をつくっていくということが最も望ましいかという論議がまず最初になされてしかるべきなのではないかというふうに思います。私の知っている範囲でとらえますと、そのあたりの作業はまださほど進んでいないようでございまして、その点から一つの抵抗を感ずるわけでございます。  なお、環境アセスメントにつきましても、できるだけその内容を充実したものにするということはもとより、従来ただあったようなアセスメントではなくしてその理解、その理解に関しましてもできるだけ私たち一般市民のレベルの者がわかりやすいような、そういう形でまとめていただき、そしてわれわれのこの東京湾なり大阪湾なりの将来どういうふうに持っていくか、その中で、埋め立て処分場というのはどういうふうに位置づけられるかということの市民的論議というものが、まず前提である程度なされるべきだというふうに考えます。  第二番目は、総合行政についてであります。  国会でも多々論議になっているようでございますけれども、とにかくごみ問題につきましては、適正に処理をすることがいかに重要であるかということは言をまちません。それに加えまして、昨今の情勢の変化のもとでごみを処理、処分をするという前の段階で、リサイクルという問題、減量という問題が出てきております。したがいまして、処分場は非常に大切ですけれども、その前の段階で、この廃棄物をいかにして減らしていくか、再利用をいかにして促進していくか、さらには適正な処理の困難なものに関してはどういう対策を、生産の段階、流通の段階、消費の段階で考えていくべきなのかというふうな一つの流れのもとで最終処分というものが位置づけられてこそ初めて意味を持つのではないかというふうに感じられます。  そういう点から考えますと、これまでも厚生、農林、通産、大蔵、経済企画庁等々に、この面での権限が分散しておりまして、国にはこれといった総合行政がまだなされていないということがよく指摘されているわけでございます。  それから、第二番目の総合行政についての点でございますけれども、やはり関連地域の中には大都市と、それから小都市、中都市というふうに、自治体におきましても規模の違い、その他いろいろの条件の違いというものがございます。したがいまして、対象地域にそのような都市が一緒になりましても、今後の清掃行政なりリサイクル行政を持っていくという点から考えますと、このような都市の規模の違いなり、あるいは様態の違いから、それぞれきめの細かいある程度の展望というものをつくった上で、共同に使用するところの最終処分場をどうするかという点の問題があろうかと思われます。  それから第三番目の総合行政についてでございますが、やはり海面埋め立てという方法と、もう一つは山間部に設けるという方法も現在あるわけでございます。  ところで、私自身、ある程度湾に面しております大都市を中心にいたしまして何らかの処分場が必要であるということは認めますけれども、ただその場合に、必ずしも言葉の語弊があるかもしれませんが、巨大な潜函をつくらなければならないというものでもないかもしれません。やはり廃棄物の処理というのは、できるだけ近いところで、そうして管理のしやすいということが、やはり技術面から申し上げましてもコストの面から考えましても妥当な方法ではないかと思います。さすれば、さらに交通事情などの点を考えますと、少し湾から奥に入ったような地域に関しましては、もう少し小さな船をたくさんこしらえて、そしてその意味での総合的な処分場の確保というものがあわせて考えられませんと、一点集中型になってしまいまして、先ほど申し上げましたようないろいろの問題が出てくる可能性があるのではないかというふうに思われます。  とりわけ交通という面からいたしますと、下から上の方に上がると、交通の逆のルートをさかのぼっていくというふうな処分場もある程度確保することの方が交通事情から見て望ましいということも一つには考えられます。そういう点から考えますと、距離は短くても大変時間がかかる、そういうあたりの問題をどういうふうに考えていったらいいかということが出てまいります。  以上のようなことから考えますと、総合行政という面のもとで、この最終処分場をどういうふうに位置づけるかという論議が、私の知っている範囲では必ずしも十分な論議がなされていないのではないだろうかというふうに感じます。  次に、センター法案は、主として組織法でございますけれども、この点に関しまして、主として以下の二点を申し上げさしていただきたいと思います。  まず、センター法案の中では、広域処理場の位置と規模と、それから受け入れる廃棄物の種類、量、受け入れ対象地域は、総合して決めていく。その間の何といいますか、関係を十分に尊重して決めていくということになっているわけでございますが、このこと自体は私はきわめてもっともなことだと考えられます。ただその場合に、一体どちらの側に合わせるのかという問題があるわけでございまして、たとえば二つの処理場の規模を決めまして、大体何年くらいの間にそれを完了させるというふうな目標を決めて作業を始めますと、むしろそちらの方に合わせてごみの受け入れをしていきたいというふうな角度にどうしてもならざるを得ないわけでございます。そういたしますと、これは明らかなように、最終処分の前の段階でのいろいろの手当て、つまりリサイクルなり減量面なりに関してどういう影響が出てくるだろうか、場合によっては円滑に処理場の作業を進めていくために、ごみが欲しいというような事態にすらなりかねません。その場合に、一説によりますと、できるだけ少なくなるにこしたことはないというお話があるようでございますが、しかしながら処理場の運営のためにかかる経費、いろいろの点を考えますと、そう楽観的な予定調和説で果たしていいだろうかという問題がございます。  第二点の問題でございますが、センター法案に限っての問題でございますけれども、この自治体は、もちろん管理委員を選びまして、そこで管理委員会をおつくりになる。そうして理事長を設けられる。さらに非常に多くの事項に関しまして主務大臣の認可が必要になっております。そう考えますと、一体この仕事の責任というのはどこにあるのだろうかという責任の明確性ということになりますと、かなり不透明な部分が出ているのではないかというふうに思います。昨今の行政学の傾向からいたしますと、できるだけ責任を明確にするということになっているわけでございまして、そのあたりがかなりまだいろいろの問題が残されていると思われます。  それから、それに関しまして、もっと具体的に申し上げますと、チェック体制といたしまして監査委員の制度を設けておられるわけでございますけれども、この監査委員の設け方というのは、従来の方法とほとんど変わっておりません。しかしながら、私は処理場の環境面から見て、あるいは現場の作業の面から見まして、いろいろな面からいたしまして、チェック体制を非常に強化するということがきわめて重要だと思います。それに関しまして、この法案では主務大臣が指導する、あるいは認可をするというお立場に立っているわけでございますけれども、主務官庁は主務官庁のお立場がございまして、それぞれ二つの処理場に関しまして果たしてどれだけ広い意味での適正な指導監督が、あるいはチェックというものができるかどうかという点から考えますと、そう大きな期待を寄せるわけにはまいりません。  したがいまして、センターにはセンター独自の監査体制を強めるべきである。そこに何らかの手だてをするべきである。昨今、オンブズマンという制度が注目されておりますけれども、まずこのような制度を適用されてこそ非常に大きな意味があったのではないかというふうに考えます。伝票の管理だけでは不十分、監査だけでは不十分というふうにすら極言をいたしますと感じられます。そういうことに関しまして、もう少し専門委員なりあるいは関係住民、それから現場で働く人たちの立場、そういう人たちの意見がこの監査体制に反映できるような一工夫がぜひ欲しかった、欲しいというふうに思われます。  時間の関係で以上に限りますけれども、私は決して、この問題を積極的に考えようということに対して、むやみに引き延ばそうとか、水をかけようとかいう形で言っているわけではございません。私は長年廃棄物の勉強をしてまいりまして、行政はやらなければならない、だから早く立てなければならないという形で、ずいぶんと多くの埋め立て処分場なりあるいは焼却場なりの建設を進めてまいりました。しかし、前もっていろいろなことを十分に考えなかったということが、結局は高いおつりになってしまいまして、五年も六年も建設が進まないというふうな事例がいまでも数え切れないほどございます。あるいは裁判事件になっているものも数え切れないくらいございます。そういう点から考えますと、私は大胆さ、効率といったものを尊重すればするほど、尊重するといいますか、その辺を重要視すればするほど、他方での民主主義といいますか、他方でのきめの細かさへの配慮というものがぜひ必要なのではないかというふうに思います。  十五分が来ましたので、これで終わらせていただきます。 資料:参議院議事録
○参考人(戸谷松司君) 戸谷でございます。  御紹介いただきましたが、私が本日この場に出席いたしましたのは、たまたま大阪湾圏域環境整備機構設立促進協議会というのがございまして、現在会長を兵庫県知事が引き受けております。そういう立場で御指名をいただいたものと存じておりますが、感謝を申し上げます。  この促進協議会でございますが、副会長に大阪府、京都府の知事さん、また大阪市、神戸市の各市長さんが当たっておられます。また、理事さんでございますが、各知事さんのほかに、京都市、和歌山市、奈良市、大津市、大阪の吹田市の各市長さんでございますが、加盟団体は八十団体を擁しております。この八十団体の加盟団体の立場から本日お願いを申し上げたいと思います。  現在、われわれ地方公共団体にとりまして大きな問題となっているのは廃棄物の最終処分場に関する問題でございまして、広域臨海環境整備センター法案について御審議をいただいておるわけでございますが、敬意を表する次第でございます。  この廃棄物でございますが、私が言うまでもございませんが、今後とも人々の日常生活や産業活動に伴って私はその排出量がどんどんふえていくのではないかと推測しております。そのほかにもいろんな最近公害の規制のための施設整備がなされております。沈でん池とかあるいは排水の処理場、いろいろなものがございますが、ダストとか汚泥等の廃棄物、あるいは御存じの上下水道の建設等も非常に盛んに行われております。いわゆる生活環境施設の整備等に伴いまして残土砂や汚泥が非常に多く発生をしておるのは御存じのとおりでございます。これらを適正に処理するということが大事な問題でございますが、ちょっと兵庫県の例を申し上げたいと思います。  兵庫県は九十一市町ございます。二十一市七十町でございますが、われわれの調査では、半数の四十市町が五年後にはすべて一般廃棄物の処分場がなくなるんじゃないかという心配をしております。特に人口が非常に多く張りついておる阪神間でございますが、なかなか各市で独自の処分場を確保できないという状況でございまして、こういう関係都市からの強い要請がございまして、現在、県では尼崎市の地先で海面の埋め立てをしております。これは大体昭和五十八年度でもう終了することになっております。そういう量を搬入しておりますので、どうしても五十八年度では阪神六市の処分場がもうなくなってしまう。そこで、丸島という地区でございますが、ポスト丸島ということを県行政の中で大きく取り上げておりますが、なかなか処分場の確保は至難のわざになっております。また、この丸島地区の延命策を図りまして、現在土砂は広島県へその処分場から船で搬出をしております。こういう現状でございます。  また県内の企業でございますが、所有している処分場が相当あるわけでございます。内陸部にもあり臨海部にもあるわけでございますが、われわれの調査ではおおむね五年以内でなくなる状態でございます。この企業も、自己の処分場のない企業もございますが、大体搬出しているのは、広島県と鳥取県へ運んでおります。非常に遠隔地へこの産業廃棄物を運んでいる現状でございます。  さらに中小企業でございますが、中小企業から排出される廃棄物は大体市町村で受け入れている、こういう事例が多いわけでございますが、市や町の処分場が先ほど申し上げましたように五年後には半数がなくなりますので、こういう中小企業者もたちまち困窮するのではないかという心配をしております。  こういう状況でございますが、兵庫県ばかりでなく近畿圏においても同じようなことが言えるのではなかろうかと考えております。特に大阪湾岸は御存じのように都市化が非常に進んでおります。各都市が連檐をしておりまして、広い処分場に適するようなところがございません。中でも内陸部の中小都市が多いわけでございますが、この内陸部の中小都市の困窮状態が非常に激しゅうございます。また、大阪湾に面している都市でも港湾管理者でない都市がございますが、その港湾管理者でない都市でもその傾向が非常に強うございます。もはや一自治体の努力だけでは限界に来ているのじゃないかというのがわれわれの考え方でございます。・・・・(略) 資料:参議院議事録

前へ 次へ