概要

 新型コロナの影響で、ごみの衛生的処理についても注目が集まった。マスクの着用が必須となる中で、使い捨てマスクが過半数を占める一方、洗えるマスクの利用を選択する人が秋にかけて増えた。また、緊急事態宣言の発令などにより、外出自粛による巣ごもりやテレワークなどが広まり、家庭ごみも増加する傾向が確認された。

 そんなコロナ禍の中、2020年7月1日にはレジ袋の有料化が全国で実施され、プラスチック削減に向けた一歩が踏み出された。約8割の人がレジ袋を使わない購入を選択するなど、行動に大きな変化がみられた。以前はごみ小袋などに利用されていた事例が多いことが明らかとなり、その行動変化については今後検討が必要となる。

 レジ袋有料化政策の評価としては、「よかった」「よくなかった」の意見に大きく分かれる結果となった。意見の幅が大きく、社会全体で関心が高いことから、こまめな議論を進めることが求められる。

アンケート実施概要

 2020年11月9日から16日まで、Fastaskによる全国市民対象にインターネットアンケートを実施した。回答数は性別および年代別に分散するようにサンプリングを行い、1,100件を目標として実施し、最終的な回答数は1,193件であった。

 結果

新型コロナウィルスに関連するごみについての集計結果

1) 主にどのタイプのマスクをお使いですか

 使い捨て(ポリプロピレン不織布)のマスク、手作りのマスク、洗える市販のマスク(主に発泡ウレタン)の3種類を選択肢として示し、どれを主に使っているのか尋ねた。ウィルス感染を防ぐ効果に違いがあるなど指摘もあるが、医療関係などシビアな状況でないのであれば、いずれのマスクでも一定の効果があるとして、着用が推奨されている。むしろ一度使ったマスクの取り外し・保管のしかた、鼻まで隠すなど、つけかたなどが、感染予防の注意点として指摘されている。

マスクの種類
図 主に使っているマスクの種類

 主に使っているマスクの種類について、緊急事態宣言が発令されていたころと、現在(11月時点)の両方について尋ねた。

 緊急事態宣言が発令された時期は、市場で不足していた状況下であったものの、使い捨てのマスクが73.2%と大部分を占めた。一方で、マスク不足が叫ばれる中、手作りのマスクを作る動きが盛り上がり、宣言中では14.4%が手作りのマスクを使っていた。

 夏場には、マスク着用によって熱がこもるため、熱中症の危険も指摘された。そんな中で、発泡ウレタン製の涼しさをアピールするマスクなども販売されるようになり、その割合が増えていった。11月時点では「使い捨てのマスク」の割合が過半数を占めて以前高いものの、当初から割合が下がり、市販の洗えるマスクが増えていた。「手作り」は大きく変化なく現在でも12.2%の人が主に使っていた。

 地域、年代、性別で大きな変化はみられなかった。

 以下はGoogle トレンドによる、「手づくりマスク」の検索件数の変化である。2月23日ころに大きく立ち上がり、ピークは4月5日から11日ころで緊急事態宣言発令直前ころとなっていた。「布マスク」についても検索のピークは同じころであった。その後大きく低下し、緊急事態宣言後は漸減が続いている。

「手づくりマスク」の検索件数
図 「手づくりマスク」の検索件数(2020年1月~12月)

2) マスクを洗って使っていますか

マスクを洗って使っているか
図 マスクを洗って使っているか

 マスクを「洗って使っているか」尋ねたところ、「洗わずに捨てている」人は、現時点(11月時点)で46.4%となった。「洗わずに捨てる」人よりも、前問の「使い捨てマスクを使っている」人のほうが多く、使い捨てのマスクでも洗って使っている人が一定いることがわかった。手作りマスク・洗えるマスクを中心に、10回以上洗って使っている人も、22.9%いた。

 なお、質問では「洗って使う」かどうかを尋ねており、使い捨てマスクを「洗わないで何回か使いまわす」人もいることが考えられる。

 緊急事態宣言が発令された頃と比べると、洗って使う人の割合が増え、10回以上洗っている人は12.0%から22.9%に増えた。

 使い捨てマスクは、ポリプロピレン製の不織布からできており、近年問題となっている「マイクロプラスチック」「プラスチック使い捨て」に大きくかかわっている。代替品の利用が可能であれば、使いまわしをすることが有効であるが、その点で使い捨てからの転換が進んでいるのは望ましい形と考えらえる。

3) 緊急事態宣言時に、食事や生活に変化はありましたか

緊急事態宣言時に、食事や生活に変化はありましたか
図 「緊急事態宣言時に、食事や生活に変化はありましたか 「とても増えた」「少し増えた」人の割合

 緊急事態宣言時の、食事や生活の変化について尋ねたところ、「家での調理」や「インターネット販売や通販の利用」、「家の補修や片付け」「家族の会話」などが増えたという回答が多かった。

緊急事態宣言時の食事や生活の変化、年代別
図 緊急事態宣言時の食事や生活の変化、年代別 「とても増えた」「少し増えた」人の割合

 年代別にみると、いずれの項目も10代から30代の若い世代が変化したという回答が多く、特に10代が大きかった。

地域別に特徴的な食事や生活の変化
図 地域別に特徴的な食事や生活の変化

 地域別の特徴がみられたものとしては、大阪は「出前」、東京は「インターネット販売・通販」、愛知は「家庭菜園」が目立った。

その他のアンケート結果

1) ごみの分別や減らす工夫

ごみ分別や減らす工夫
図 ごみ分別や減らす工夫

 「ごみなるようなものは買わないようにしている」については、実行率がやや低いが、ほかは「できている」「だいたいできている」を合わせて9割近くの人が取り組めている結果となっている。

年代別のごみ分別や減らす工夫
図 年代別のごみ分別や減らす工夫

 年代別でみると、分別ルール、リサイクル、レジ袋を断るといった行動については、20代から30代が低く、60代以上が最も高くなっている。一方で、ごみになるようなものを買わないについては。10代が最も高くなっている。

 性別、地域別では大きな違いはみられなかった。

2) 次の言葉を聞いたことがありますか。聞いたことがあるもの全てにチェックをつけてください。

聞いたことがある言葉の割合(2012年と2020年の比較)
図 聞いたことがある言葉の割合(2012年と2020年の比較)

 聞いたことがあるという割合は、「リサイクル」の87.4%、「レジ袋有料化」の78.8%などが高かった。

 2012年と2020年の比較では、同じ項目で尋ねたものはのきなみ、「聞いたことがある」率は低下している結果となった。この間、地球温暖化などが大きな話題となり、またごみに関してはプラスチックや食品ロスなど身近な話題が大きく、処分場などのごみ問題全般があまり話題にならなかった可能性がある。

 性別で違いがみられたものとしては、社会的課題である「豊島不法投棄事件」は女性が8.0%に対し男性が15.5%と高く、また「循環型社会」は女性が19.0%に対して男性が33.6%と高かった。一方、生活に基づいた「レジ袋有料化」については男性が75.5%に対して女性が82.0%と高かった。

年代別の聞いたことがある言葉(視点)
図 年代別の聞いたことがある言葉(視点)

 年代別に特徴ある傾向を見せた言葉としては、「リサイクル」「循環型社会」「マイクロプラスチック」については、10代と50代以上が高く、20代から30代で聞いたことがある割合が低かった。「3R」については若い世代のほうが効いたことがある割合が高く、10代と20代ではリサイクルに匹敵する割合となった。

 「3R」や「循環型社会」といったことばを学校の授業で学んでいることが寄与していると考えられる。

年代別の聞いたことがある言葉(施設・事件)
図 年代別の聞いたことがある言葉(施設・事件)

 また施設や事件について年代別で比較すると、「東京夢の島」は年代が高い層では、大部分の人が知っている一方、30代以下ではほとんど知られていなかった。「豊島不法投棄事件」は60代以上が24.2%と高くなっていた。

レジ袋有料化

1) レジ袋の有料化による行動

レジ袋を購入していますか
図 レジ袋を購入していますか

 2020年7月の全国的なレジ袋有料化から4ヶ月が経過した11月の時点での調査となっており、ほぼ半数の人が「レジ袋を購入しない」と回答し、「なるべくレジ袋を購入しない」を含めると、76.8%の人が購入しないことを基本としている。いつも購入している人は4.7%にとどまっている。

年代別のレジ袋の購入
図 年代別のレジ袋の購入

 年代別にみると、60代以上が「レジ袋を購入しない」割合が特に高く、30代以下は4割以下となっている。ただし30代以下でも「いつも購入している」割合は高いわけではなく、「必要に応じてレジ袋を購入」という回答が多くなっている。

2)有料化前の袋

一斉有料化前に、袋をもらっていましたか?
図 一斉有料化前に、袋をもらっていましたか?

 一斉有料化前の行動について尋ねた。袋が有料のお店の場合には、現在と同様に断る人が多く、いつももらっていた(買っていた)人は5.7%、袋を断るとポイントがもらえるお店の場合には、いつももらっていた人は14.5%だった。一方、袋が無料のお店の場合には、いつももらっていた人は51.8%もおり、断る人は3.6%にすぎなかった。仕組みとして導入されることで、行動がかわる状況が示されている。

以前有料で販売するお店で、袋を「断っていた」「よく断っていた」人の割合
図 以前有料で販売するお店で、袋を「断っていた」「よく断っていた」人の割合

 以前に有料だったお店での行動で、袋を断っていた人の割合は、年代が高いほど高かった。これは、一斉有料化も同じ傾向があり、高い年代ほど、有料に反応する傾向が確認された。

3) 以前もらったレジ袋はどうしていましたか?

以前もらったレジ袋の使い道(「よくしていた」人の割合)
図 以前もらったレジ袋の使い道(「よくしていた」人の割合)

 「家のごみ箱にかぶせて、ごみを捨てるときの小袋として利用した」のが70.7%など、活用していた人が多く、「そのまま捨てていた」人は5.5%だった。

以前もらったレジ袋の使い道として、よく「他人にものをあげるときに袋として利用した」人の割合(地域別)
図 以前もらったレジ袋の使い道として、よく「他人にものをあげるときに袋として利用した」人の割合(地域別)

 地域別にみると、「他人にものをあげるときに袋として利用した」ことが多い地域として、甲信越北陸岐阜地域が多くみられ、大都市部や北海道は低かった。そのほかの項目については、明確な地域による違いがみられなかった。

4) レジ袋の有料化はよかったですか

レジ袋の有料化はよかったか
図 レジ袋の有料化はよかったか

 賛否が大きく分かれており、今後も議論をしていく価値が高いと思われる。地域、性別での有意差は認められなかった。

 以下、既存のレジ袋への対応ごとの、反応について分析を行った。

現在レジ袋を購入しているかどうか別、レジ袋の有料化はよかったか
図 現在レジ袋を購入しているかどうか別、レジ袋の有料化はよかったか

 赤色の「よくなかった」と回答する人の割合は、「レジ袋を現在購入している頻度が高い」ほど多くなる結果となった。ただし、レジ袋をいつも購入している人についても、「とてもよかった」と回答する割合が25%と高くなっており、賛否両面への意志表明が大きくなっている。

 「あまりよくなかった」「よくなかった」を合計すると、比較的受け身で対応している表現となっている「必要に応じてレジ袋を購入している人」が最も批判的に評価が大きい結果となった。

以前無料配布のお店での行動別、レジ袋の有料化はよかったか
図 以前無料配布のお店での行動別、レジ袋の有料化はよかったか

 以前の無料配布のお店でも「必ず断っていた」とする人は、有料化については「とてもよかった」とする回答が40%と非常に多かった。逆に「いつももらっていた」人については、「よくなかった」「あまりよくなかった」回答を合わせて44%と、反発が多い結果となった。

家のごみ箱にかぶせて、ごみを捨てるときの小袋として利用していたかどうか別、レジ袋の有料化はよかったか
図 家のごみ箱にかぶせて、ごみを捨てるときの小袋として利用していたかどうか別、レジ袋の有料化はよかったか

 レジ袋を有効利用していた人については、有料化への反発も大きいかどうか比較した。ごみ袋としての利用をよくしていた人は、有料化が「よくなかった」とする回答は19%と、していなかった人の29%と比べて少なかった。

 そのほかのレジ袋の利用行動に関しても、あまり有料化への評価との関連はみられなかった。

 レジ袋を利用していた人だから、有料化に反対しているというわけではないという結果となった。

 この結果、実際に家で活用していたかどうかは関係なく、買い物の場でもらっていたかどうか(買い物袋を持ち歩いていたかどうか)で、今回の有料化の評価に違いがでていたことが明らかとなった。


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Last-modified: 2021-05-10 (月) 20:48:40 (1074d), by NPO法人 環境安全センター